青いそら~オニーとオカンと時々イモート~

これはアスペルガーのオニーとフツーのオカン、2人の20年以上にわたる成長記録である。

71*2013 オニー中学校2年生>>8

夏休みに入った頃、姉が家に遊びに来た。未亡人の姉には、それまで夫の不満、育児の大変さや泣き言など言った事が無かったのだが、心に全く余裕が無くなっていたオカンは初めて崩壊しかかっている家庭事情を話した。話している内に涙が止まらなくなり、10年以上の家族不和の経緯を話した。

姉は家まで建てて幸せに暮らしていると思っていた妹の家庭が、まさかそんな事になっているとは露ほども思っておらず、ただただ驚いていた。

以前1度育児の愚痴を言った時、「あんただけが大変なんちゃうやろ。私は子どもが居ないから分からんけど、私の友達も皆頑張って子育てしてるで。皆大変やん?」と言われ、それ以来、夫も子どもも居ない姉には何も言わなくなっていた。

初めて妹の口から聞く義弟の姿が、たまに会う時のイメージと合わないようで、それにもとても驚いていた。そう、夫は見た目は大人しくて優しくて静かな人に見えるのだ。社交的で明るいオカンが優しい夫を尻にひいている。それがオカン夫婦を知る世間の人のイメージだった。オカンと夫をよく知るコアな友達と実母と義母を除いて。

夫の前でオカンは、常に顔色を窺い、機嫌のいい時に言葉を選んで話し、子ども達に不利にならないように必要な会話だけをし、なるべく顔を合わせないようにして暮らしていた。何時からそうなったのだろう…。

幸いオカンには、夫を1番理解した上で味方をしてくれる義母がいた。義母は義父(別居していた)とそっくりな息子を苦手に思っていたので、私の気持ちを分かってくれた。愚痴をオブラートに包んで話すと、いつも「あー分かるわ。お父さん(義父)と一緒!だから何も頼まないし、喋らなくなるのよね。そっくりやわ。」と共感してくれた。2人で出掛けると、「可哀想に、ストレス溜まるね。ストレス解消しよう!」と言って、美味しいご飯をご馳走してくれ、服やバッグ等を買ってくれたりした。義母が居なかったら、確実にカサンドラ症候群になっていたと思う。

とはいえ、家での父と息子の関係は相変わらず悪く、夫と仲良くしようと頭では思っていても心から夫に寄り添えない自分に苦しんでいた。

そんなオカンに姉が、「もしかして、オニーはアスペルガーじゃない?」と言って文献をくれた。読んでみたが、いまいちよく分からず、ゴッTに相談した。

「ウチのオニーはアスペルガーでしょうか?」

しかし当時はまだあまり発達障害は認知されておらず、ゴッTも分からなかった。そこでオカンは自ら児童相談所に相談してみた。児童相談所なのだから、児童の相談に乗ってくれるハズ!オニーに父親を殺させる訳にはいかない。イモートの為にも、絶対に。

まずは電話をし、オニーの現状を話した。相談員の方が話を聞いて下さり、カウンセリングを勧めてくれた。「息子さんを連れて来ることは出来ますか?」「はい!連れて行きます!お願いします!」藁にもすがる思いでカウンセリングの予約をした。オニーに、一緒にカウンセリングに行ってみないか、と聞くと「えーよー」と快諾。夫にもオニーを連れてカウンセリングに行く事を話すと、それは良いかも、と言ってくれた。

カウンセリングを受ければ何か分かるかも、何とかなるかも…。一筋の光だった。