青いそら~オニーとオカンと時々イモート~

これはアスペルガーのオニーとフツーのオカン、2人の20年以上にわたる成長記録である。

70*2013 オニー中学校2年生

夏休みに入る少し前、オニーが可愛がっていたチョロ太が死んだ。

小6の春から飼い始め、中1の時には一緒に旅行へ連れて行ったチョロ太。2才を過ぎた頃から丸々としていたフォルムは少しづつ小さくなり、寿命の近づきを感じさせていた。チョロ太に接するオニーは、いつも昔のままのオニーだった。

ある日の夕方、チョロ太の動きがおかしく、これはもうすぐ天国へ逝ってしまうと感じたオカンは、学校に持って行ってはいけないスマホに電話をかけた。出ない。オニー、早く帰って来て!チョロ太が逝ってしまう!何度も何度も電話をかけた。

チョロ太を手のひらで包みながら、「チョロ太、もう少し、もう少しだけ頑張って!オニーが帰って来るまで待って!」と祈っていた。

ガチャッと鍵が開く音がして、オニーが帰って来た。「オニー!早く!チョロ太が…!」オニーはリビングに駆け込んで来て、オカンの手からチョロ太を自分の手のひらに移した。「チョロ太…。チョロ太…。」ポロポロ涙をこぼしながら、オニーはずっとチョロ太を撫で続けていた。

どれくらい経っただろうか、チョロ太は動かなくなった。天国へ逝った。「オニーが帰って来るん待ってたんやね。」「チョロ太、ありがとう。」チョロ太もオニーも穏やかな顔をしていた。

オニーは本来こういう子なのに…。どうして荒れるのか?何にイライラしているのか?思春期でホルモンのバランスが崩れているのか?どうして?なぜ??

チョロ太の前の素直なオニー。人が変わった様に不機嫌になるオニー。かと思えば、オカンに甘えてくるオニー。どうなってるの?一体…?

1つ、思い当たる事がある。それは父親への強い反発と嫌悪感。オニーは自分でも自分を持て余しているようで、「何がしたいんか分からへん。お母さんを悲しませたい訳じゃないのに…。」と泣いてみたり、かと思えば「ヤツを殺してやりたい!ヤツを殺してオレも死ぬ!」と言い出したり、情緒がバラバラだった。

このままでは危ない。いくら夫婦仲を改善したとて、オニーの父親への感情がこのままだと危険だ。夫の愛情の電池が充電完了する前にオニーが父親を殺したら…?イモートはどうなる?

夫の愛情不足は深刻で、直ぐになんとかなるとは思えなかった。親で満たされなかった愛を嫁に求めたのに、子どもが出来た事でまた満たされなくなった。愛情の枯渇状態が続いた夫に、自分の電池が満たされないままでは息子への愛情や共感は望めない。どうすれば2人共救えるのか?オカン1人で同時に2人を充分に満足させることは不可能だ。

どうすれば良かったのだろう…。