青いそら~オニーとオカンと時々イモート~

これはアスペルガーのオニーとフツーのオカン、2人の20年以上にわたる成長記録である。

69*2013 オニー中学校2年生>>6

夫との関係修復を頑張るオカンと、思春期で自分でも分からないモヤモヤの中でもがくオニー。生意気な口をきいたり、ちょっとした事で不機嫌になって家を破壊したりしていたが、(イモートの部屋のドアはオニーが体当たりして穴があいていた…)今から思えば普通の中坊だったのかもしれない。

夏休みを前に、オカンはとても不安だった。昨年は部活のお陰で長い夏休みも規則正しい生活が出来た。しかし今年は部活もなく、夜の塾までの間をどう過ごすのだろう。きっとS君とつるんでヒマを潰す。そんな状況が続いたら、夏休みの間に堕ちる所まで堕ちてしまう…。

オカンは夏休み前に決まったパート先を辞退した。働いている場合ではない。オカンは必死に考え、オニーに何かしたい事はないか聞いた。「思っきり人をボコボコに蹴りたい。あと…泳ぎたい。」うーん…。キックボクシングとか?空手?スイミング??

パソコンで調べまくった。近所で習える所はないか。調べては電話で問い合わせたり、イモートを連れて自転車でその場所へ行ってみたりした。ある時、かなり遠くまで探しに行って疲れ、途中のコンビニでジュースを買ってイモートとしゃがんで飲んでいた時、オカンがポツリと「なんか…ママ間違ってたんかなぁ…」と弱音を吐いた。イモートはきっと、何も分かっていなかったのだろうが、「そんなことないやろ。」と言ってくれた。

まだ小学校4年生のイモートは、多分オニーに何が起こっていて、両親がどうなっていたのかは分かっていなかっただろうが、オカンがとにかく辛そうだという事は感じていたようだ。

必死に色々探したが、どこも習い事は夕方からで、朝から昼間の時間を埋める事は出来そうになかった。どうすればいい?困ったオカンはゴッTに相談した。するとゴッTが「私が顧問をしているサッカー部に入らないでしょうか?」と言って下さった。サッカー部は夏休み中、暑くなる前の早朝から練習が始まり、気温が上がってくるとプールで泳ぎ、その後クーラーの効いた部屋でお弁当を食べて夏休みの宿題をして、15時頃に解散する。これは素晴らしい!

早速、オニーに聞いてみた。「オニー、サッカー部に入ってみぃひん?」オニーは満更でも無さそうに、「えーけどー。」と言った。良かった!

と思ったのも束の間、翌日オニーが学校から帰って来て、「ムリや。サッカー部入れへん。」と不機嫌に言う。理由を聞くと、サッカー部はユニフォームやスパイクが必要で、全部揃えると3万円くらいかかると言われたそうだ。なんせ我が家は小遣い年棒制(半年制?)。既にスマホと普段のお小遣いで半年分のほとんどを使ってしまっていたオニーは、ゴッTにお金がないからムリ、と言ったそうだ。

ゴッTから電話があり、父親の決めた小遣い年棒制について聞かれた。以前よりオニーから父親との関係が非常に悪いと聞いていたゴッTは、「1度お父さんとお母さんお2人で来て貰えますか?」と言った。

夫に先生からサッカー部の入部を提案して貰った事やお金の事を話したが、夫からすればやはり、自己管理が出来ていない本人の責任でしかなかった。とりあえず2人で学校へ行くと、ゴッTが言った。

「中2の夏はとても危ない時期なんです。中だるみの学年でもありますし、今の状態だと非常に心配です。サッカー部ですが、とりあえずスパイクだけあれば、後は試合に出るようになるまでは家にあるTシャツと短パンで大丈夫です。なんとかなりませんか?」

夫は、私からでなく、先生から直々に言われたことで、「まぁ、そうですねぇ…。」という感じ。更にゴッT、

「オニーの小遣いが年棒制とお聞きしましたが、中学生男子が一度に大金を持つと、やはり気が大きくなって使ってしまうんじゃないですかねぇ。毎月やり繰りしていく練習から始めないと。私なら今でもムリですよ。」

と冗談っぽく言って下さった。「…はぁ。分かりました。」夫は渋々サッカー部の入部と小遣い年棒制の廃止を受け入れた。ゴッT、ナイス!!

家に帰り、オニーに小遣い年棒制廃止を伝え、スパイクは買ってあげるからサッカー部に入るかと聞くと、何処かで自分も不安だったのだろう、入る!と決まった。

オニーがS君にその話をしたら、元サッカー部のS君が、ユニフォームやジャージ等をくれた。持つべきものは先輩…うーん、複雑。

入部は、7月末に3年生が引退してからが良いだろう、という事になり、夏休みに入って1週間程だけヒマになった。その間、オニーは体力作りをする!と言い出し、毎朝オカンとイモートは自転車でオニーのランニングに付き合わされた。ボールをチャリ籠に入れ、少し遠い公園までオニーが走る後ろをチャリ2台がちゃりちゃりついて行き、公園に着いたら3人でサッカーボールを蹴ったり、バスケットボールでシュート練習をしたり、鬼ごっこをしたりした。

傍から見れば、仲の良い親子3人だっただろう。中身は危なっかしい思春期のオニーとハラハラしているオカンと2人を見守るイモートだったのだが…。

こうして中学2年の夏休みが始まった。