青いそら~オニーとオカンと時々イモート~

これはアスペルガーのオニーとフツーのオカン、2人の20年以上にわたる成長記録である。

67***ときどきイモート4***

イモートの記憶…

まだイモートが三輪車に乗っていたから、年少位だっただろうか。オカンが神戸へ友人と会いに行くため、父親に子ども達を頼んでいた。

夕方、駅から家へ向かって歩いていると、途中で三輪車に乗って父親と公園へ向かうイモートを見かけた。「イモートー!」とオカンが呼ぶと、オカンに気付いたイモートが、手を振りながら「ママー!おかえりー!こうべたのしかったー?」とニコニコしながら聞いてきた。

「楽しかった?」なんて言葉が出ることにびっくりさせられた。オカンが数日前からこの日を楽しみにして、自分の子ども達も相手の子ども達も元気で出掛けられます様にと祈りながら、何を着ていこうか、何を食べに行こうか、ウキウキしていたのを分かっていたかのように感じたからだ。

イモートにはそんな子どもらしからぬ所が時々感じられた。

そんなイモートが、小3のお誕生日にDSを買って貰う事になった。オニーに与えた歳までは、と待たせていたので、待ちに待ったイモートは嬉しくてしょうがない。本体とニンテンドッグスのカセットを買って貰い大喜び。

その頃にはオニーはもう中学生で、DSはほぼ卒業していたが、オニーはポケモンやイノズマイレブンのカセットを誕生日やクリスマスにプレゼントとして買って貰い、その攻略本はお小遣いで買っていた。父親にねだっても、小遣いで買えと言われていたからだ。

オカンが冗談で、「犬育てるのも攻略本とかあるんかな?」と言い、オニーは「戦うんちゃうのにそんなんあるかー?」と言って笑っていた。

すると後日、家に本が届いた。夫の名前だったので渡すと、「あー来たきた。イモート、はい、これ、ニンテンドッグスの攻略本!楽しんでねー。」と渡して2階へ上がって行った。

1階に残された3人はシーン…。オカンはハラハラした。オニーはどう思う?するとオニーが「やっぱ、イモートはええよなー!オレなんか絶対買って貰えんもん。自分で買え!って言ってさー。」と言った途端、イモートが持っていた攻略本を思いっきりバシッと床に叩きつけた。

「こんなん買ってって言うてへん!!!」

そのまま2階の自分の部屋へ行ってしまった。

1階に残されたオカンとオニーと攻略本…。2人ともビックリした。イモートのそんな姿は初めてだった。オニーが少し嬉しそうに「びっくりしたなぁ。」と言った…。

この時から、オニーはイモートを完全に信用した様に思う。いつも父親に可愛いがられ、イモートばっかり贔屓されていると思っていた。でもイモートは、そこで調子に乗って父親に媚びを売る奴ではなかった。イモートは味方だ。

何年か後に、この時の話をイモートとした。イモートはずっとオニーを好きなのに、父親が自分の事でオニーを怒るからオニーに嫌われてる(と思う)のが凄く嫌だったそうだ。「嫌いな人のせいで好きな人に嫌われるねんで?サイアクやろ?」と。

きょうだいの仲を左右するのは親。

親は責任重大だ。