青いそら~オニーとオカンと時々イモート~

これはアスペルガーのオニーとフツーのオカン、2人の20年以上にわたる成長記録である。

56*2012 オニー中学校1年生>>4

2学期。体育祭の練習が始まった。

集団行動が苦手なオニーにとって、暇と待機は苦痛でしかない。応援合戦の練習は3年生が団長となり、縦割り3学年を仕切るのだが、どうも段取りがあまり上手くなかったようだった。

暇になると、オニーはロクなことをしない。ここからはオカンの想像を交えて再現すると、練習が進まず暇になったオニーは、ひな壇の自分の前に立つ級友X君の髪の毛をピッと引っ張った。「やめてや。」X君が振り返って言う。やってませーん、の体で知らんぷりをするオニー。前を向いたX君の髪をまたピッと引っ張る。「やめてって~」オニー知らんぷり、を繰り返す。

体育祭の練習以外でも、オニーと数人の子でX君にちょっかいをかけていたらしい。そして、X君が学校に来なくなった。

先生方はX君のご両親と話し合い、オニー達による"いじめ"と判断した。オカンは学校に呼び出され、生活指導のゴッTと担任のK先生にオニーの近況とX君の不登校を知らされた。オカンは全く何も知らず、ただただびっくりした。

オニーはずっと問題児ではあったが、特定の子を虐める、という事はなかったからだ。まず、オニーの話を聞きたい。とりあえずその日は家に帰ってオニーから話を聞いて、その上でもう一度先生方と話したい、と伝えて帰った。

その夜、オニーに聞いた。「X君、学校来てないねんて?」「んー?そういえばそうかな?」「なんでか知ってる?」「いや、知らん。そんな仲良くないからなぁ。なんでなん?」・・・これは・・・もしや💧自覚が無いのでは・・・?

「今日な、学校呼ばれて行ってん。ゴッTが言うに、X君が学校来てないのはオニー達が関係してるみたいやってよ?」「えー?そうなん?」「何かした?」「いやー?」「髪の毛引っ張ったりした?」「そーそー!応援の練習ん時な!ピッて引っ張って知らんぷりするやつ、な!」「しつこくしてへん?」「何回もしたけど、いつも笑ってたで?」「・・・。」

オニーに悪気は無かった。ただ、幼少期からの特徴、しつこく引き際がわからない。自覚がないのは1番タチが悪い。悪気が無いから止めない。

オカンはオニーに、誰もがオニーの様に嫌な事は嫌だ、と言えるわけではないことを教えた。"顔で笑って心で泣いて"ということもあるのだ、と。しかし、オニーには全く理解出来なかった。どうして泣きたい時に笑えるのだ?嫌なのに笑っていられるのか?

アスペルガー。言葉や態度をそのままにしか受け止められない。その裏に隠された感情や心境を読み取る事はもちろん、想像する事が出来ないのだ。

とりあえずオニーに、X君がオニー達にちょっかいをかけられるのを嫌がっている事と、それを面と向かって嫌だと言えない事、そういう子も居るということを教えた。「ふーん( ¯꒳¯ )」余り心に刺さっている様には見えなかった。

その後、校長先生も含む先生方とX君のお父さん、虐めた生徒3人とその母親で話し合いが行われた。子どもも親も謝罪した。

この時は学校から父親を呼ぶように言われなかった事もあり、夫に話はしたが、ふーん、という感じだった。

オカンは不安だった。これからどうなるのだろう。オニーは普通じゃない。ちゃんと話せばもう同じ事はしないのだが、応用が利かないというか、少し違う種類の事をまたやってしまう所がある。夫もグレーだからか(当時は思いやり欠乏症と思っていたが)そんな事くらいで?という受け止め方だった。

その後、オカンの不安はどんどん的中していくのだった・・・。