青いそら~オニーとオカンと時々イモート~

これはアスペルガーのオニーとフツーのオカン、2人の20年以上にわたる成長記録である。

8***オカンの夫 = オニーの父親***

オカンには(実は)夫がいる。オニーとイモートの父親だ。この人は社会的には凄い人で、現役で国立のかしこ大学に入り、大学院を出て、大企業で研究者として働いている。

幼い頃、オニーは外でよく遊んでくれる父親を好きだった。オニーは3歳になると直ぐに自分のことを「オレ」と呼ぶようになったが、後々聞いた所によると、いつも自分のことを「パパ」と言っていた父親が、ある時オカンとの会話で「俺はー」と言っているのを聞き、「カッケー✨」と思い、自らを「オレ」と言うようになったそうな。

しかし、既にこの頃から、こんな頃からすこーしずつ、すこーーーしずつ、オニーと父親の心の距離は開いていった。そこには父親のオニーとの関わり方に原因があったと思う。

オニーはきちんと説明されて納得しないとテコでも動かない、言うことを聞かない子だった。しかし、納得さえすればとても素直に聞き入れる。つまり、その場限りの適当なウソや誤魔化しは一切通用しない、1つ1つ丁寧に説明し納得させなければならない子だった。

これはとても時間と根気のいることで、つい小さい子だと油断してテキトーなことを言おうもんなら後でしっぺ返しをくらう。ああ言えばこう言う。当時オカンは、オニーはあまのじゃくだと勘違いしていたがそうではなく、オニーは生まれつきのアスペルガーだったのだ。

父親はこのメンドーな我が子にきちんと説明して納得させる、時間をかけて向き合う、丁寧に1人の人として尊重して付き合う、ということが出来なかった。かく言うオカンもまだまだ未熟な母親で、どうすればこの子に伝わるか、なぜ他の子達と違うのか、等など悩みながら手探りでオニーを育てる日々。賢い(ハズの)夫にアドバイスをする自信などなく、がむしゃらにオニーと向き合い、問答を繰り返すので精一杯。夫と向き合う余裕はなかった。

これが後々、夫婦関係に大きな影響を与え、溝を広げていくことになる。

多分夫もアスペルガーで、でもオニーほど酷くなかった為に誰にも気付かれず、自分さえも気付かずに生きてきたのだろう。”どうせ俺は誰からも愛されへん”と1度だけ言った夫もまた、オニーの様に幼い頃から少し周りと違ったのだと思う。でも夫はきっと自分がアスペルガーだとは認めないだろう。

アスペルガーに気付かない、気付いても受け入れることが出来ない人は、自らも、身近な人達も傷つけながら生きていく・・・。