青いそら~オニーとオカンと時々イモート~

これはアスペルガーのオニーとフツーのオカン、2人の20年以上にわたる成長記録である。

24***オカン 衝撃の出来事***

オカンはオニーがオニーちゃんになって以来今に至るまで、1度も「お兄ちゃんでしょ!」「お兄ちゃんなんだから・・・」と言った事は無い。特に意識していた訳ではなく、そもそもそういう感覚が無いのだ。

7歳の子が3歳の子に出来る事、してはいけない事、7歳の子はしていい事、3歳の子はまだしてはいけない事・・・そんな感覚だった。

暗黙のルールが色々あった。例えば歳に応じて就寝時間を決めていたので必然的にイモートはオニーより早く寝なければならない。ケンカをした時、大概泣かないイモートが泣いたら戦闘不能としてそこで終わる。お小遣いは小学校1年生から。イモートはオニーを”オニーちゃん”と呼ぶ。等など。

オカンの目論みは、下に上を良いなぁと思わせる事
であり、上に下より優遇されているように感じさせる事だった。上の子はどうしても下の子をズルいとか良いなぁと思いがちだ。知恵がついているから。だからこそまだよく分かっていないイモートは置いといて、オニーに「自分の方が良い!」と思わせたかった。そうすることでイモートに対して余裕を持って少し優しく出来ると思ったから。(これは歳が近いと出来なかったかもしれないし、男女で無ければ無理だったかもしれない。)

ある時、オカンは義母を誘ってイモートと3人でディズニーオンアイスを観に行った。プリンセス総出演の年で、いつも鈴鹿サーキットや当時乗れないモノだらけのUSJに付き合わされていたイモートへのオカンの想いからだった。プリンセスのドレスを持って行き、会場近くでドレスに着替えショーを観た。義母にプリンセスのグッズを買ってもらいご満悦。その頃オニーは父親とバッティングセンターやゲームセンターで遊び、夕飯時に繁華街で合流した。

焼肉屋の席につき、イモートが今日のディズニーオンアイスが楽しかった\♪♪/とグッズを見せていると、オニーが不機嫌になった。「イモートだけズルい。」「いや、一緒に行くか聞いたやん?行かへん言うたよね?」「・・・うん。」「今日バッティングセンター楽しかったんちゃうのん?」「・・・まぁ。」「たまにはイモートも女の子の楽しいとこ行かしたりたいやん。」「・・・。」

そんなオカンとオニーのやり取りを聞いていた父親が、せっかく自分の母親も含めての外食の雰囲気を悪くしているオニーを怒った。更に不機嫌になったオニーに義母が、「オニーはお兄ちゃんでしょ!せっかくイモートが楽しかったのにそんな態度をとるなら、もうおばあちゃんのお家に来ないでちょうだい!」と言ったのだ。

私はビックリした。父親に怒られ、更におばあちゃんにまで怒られたオニー。しかも初めて聞くフレーズの「お兄ちゃんでしょ!」父親はその通り、と言わんばかりに更に言葉を重ねる・・・。

「やめたってーー!!」オカンは心の中で叫んでいた。2人して責めんといて!!

オニーはディズニーオンアイスに行きたかったのではない。きっと父親と2人の時間がそんなに楽しくなかったのだろう。だから、楽しかったイモートとそれを嬉しそうに見ているオカン達を見て不機嫌になったのだろう。自分が楽しかったら人の事を妬んだりしないのだ、人ってやつは。

せっかくの焼肉も全く楽しめず家に帰った。すると自分の母親の前で恥をかかされたと思ったのか、父親が家でもオニーを怒り、扇風機を蹴り倒して壊した。常に優等生の"自分"の息子が、"自分"の母親の前で”良い子”でなかった事が腹立たしかったのだろうか?世間体を気にする父親は外食時に"楽しく過ごす家族"で居られなかった事に腹を立てたのだろうか?

そして義母の放った衝撃の言葉、お兄ちゃんでしょ!お兄ちゃんやお姉ちゃんである事は産まれた順番だけの話。上の子は下の子を可愛がらなければならず、ワガママを言ってはいけないものなのか??

しかしオカンは、下の子が上の子をオニーちゃんやオネーちゃんと呼ぶ事には賛成だ。上は下に「オニーちゃん」と呼ばれる事で「自分はお兄ちゃんだ。」と、下は「オニーちゃん」と呼ぶ事で「自分よりお兄ちゃんなんだ。」と無意識に自覚していくと思うからだ。

三つ子の魂が百まで続くのなら、オカンが虹の橋を渡ってもオニーはイモートを守って欲しいし、イモートはオニーを慕って欲しい。そんな願いから、オカンはイモートにオニーを「オニーちゃん」と呼ばせて育てた。しかし、今や「オニー」であるが💧

オカンと父親の育児の感覚は確実に違っていた。こういう話を2人で話し合って、私の意見も聞いて貰えたら良かったなぁ。オカンは自分を否定されたと感じたらカッとなって口撃してくる夫が怖くて、育児の話は勿論、何も話せなくなっていった。今でも非常に残念である。

(※義母とはナゼかいまだに仲が良いのですが(^^ゞ)