青いそら~オニーとオカンと時々イモート~

これはアスペルガーのオニーとフツーのオカン、2人の20年以上にわたる成長記録である。

31*2008 オニー小学校3年生>>2

3年生の1学期も終わりの頃。

オニーは授業中は普通にしていた様だが、決められたカリキュラム以外の皆で協力、的な作業(給食の準備や掃除など)はほぼサボっていたようだ。

社会性に障害があり、集団の”暗黙のルール”に従うことが苦手なアスペルガーの特徴を考えると納得である。だが、周りからすれば、ただ単に嫌な事をサボってるだけにしか見えない。

また、そんなオニーにつられて一緒にサボる男子達がいて、オニーも1人じゃないから尚サボって遊んでしまう。勿論先生は注意したり怒ったりしていたのだろうが、そこで言うことを聞けるフツーの子とは違い、「ダメなものはダメ。」「皆ちゃんとやってるでしょ?」はオニーには通じない。I先生はとても困っていただろう。

小学校3年生にもなると、幼い男子に比べ、女子が格段にしっかりしてくる。正義感の強い女子が、皆がする事をしない⇒クラスのルールを守れない⇒先生も困っている⇒これはクラスの一大事!学級会で話し合おう!!と提案した。

I先生から電話があり、5時間目に学級会を開くので来てくれないかと言われた。イモートを園のバス停へ迎えに行き、その足で小学校へ向かった。

学校に着くと、学級会は既に始まっていたので教室の後ろからそっと覗いて見ていた。椅子をまあるく並べた真ん中にオニーが座っていて、1人の女子が「オニーはなんでいつもちゃんと掃除をしないのですか?」と聞いた。オニーが何と答えたかは聞き取れなかったが、その女子が声を荒らげて何かを言い返していた。他の女子も口々に「皆がちゃんとしてる時に自分だけふざけて遊んでええと思ってるんですか?」「おかしくないですか?」「なんで今もヘラヘラしてるのん!?」そして最後に「そんなん、3年2組の仲間ちゃうやん!」と言った。するとオニーが言った。「オレ、別に仲間ちゃうし。」一生懸命言っていた女子が泣き出した。

キーンコーンカーンコーーン

チャイムが鳴って5時間目が終わった。I先生が、「とりあえず今日はここまで。ハイ、椅子を戻して!」と言った。泣いてる女子を慰める女子。やっと終わったーという感じで椅子を戻す男子達。そしてヘラヘラしているオニー。

オカンは頭に血が上った。怒りでいっぱいになった。なんであんな態度なのか。皆がしている事をせず、迷惑や不快感を与えて、それでも仲間やんと言ってくれる子を泣かせ、学級会が終わってもヘラヘラしてるオニーを許せなかった。

オカンはズカズカと教室に入り、オニーを捕まえて思いっきり頭(顔かな?)をひっぱたいた。「ええ加減にしなさい!!皆アンタの事を一生懸命考えてくれてるんやろ?なんでヘラヘラしてるんや!情けない!もうオカンはアンタの事なんか知らん!!」

突然のオカンの出現に驚くオニーをよそに、オカンは廊下で大人しく待っていたイモートの手を掴んで足早に家に帰った。涙が溢れて止まらなかった。もう嫌や。もうムリや。あんな子、よぅ育てへん。いくら言っても、何を言っても伝わらないあんな子、ムリムリ。出て行こう。

家に帰って、イモートの幼稚園グッズや着替えをボストンバッグに詰め、駐車場へ向かった。すると、何かを感じとったオニーが走って家に帰って来るのが見えたので、見つからないようにやり過ごしてイモートを乗せて車を出した。

神様、ごめんなさい。私はオニーをもうよぅ育てません。