58***2021 夏 オニーの帰省***
2021年夏。大学2年生の現在。
この春からオニーは思うところがあって、ある国家資格を目指して猛勉強中だ。夏休みの8月いっぱいは、帰省して勉強するのでよろ!と言われたのは梅雨の頃だっただろうか。
オニーが帰ってきて早2週間。ちょっと嬉しかった話・・・。
中学の終わりか高校になってからか忘れたが、オカンは犯罪に対して罪悪感が薄いオニーに危機感を持っていた。いくら言葉で犯罪を犯したら親はともかく、身内、特にイモートに迷惑をかけるのだということを教えても、「オレには関係ない。」と言うオニー。「じゃあ、イモートが犯罪犯して、そのせいでオニーが就職や結婚が出来なくなったらどう?」と聞くと「ぶっ殺す( -᷅_-᷄ )」と言う。・・・ダメだ。伝わらない。
そこで、ビデオを借りて一緒に観た。
「それでも生きてゆく」
テレビドラマのビデオ。これはおそらく神戸の連続児童殺傷事件をモチーフにしていて、幼い妹を殺された兄を瑛太、瑛太の妹を殺した瑛太の同級生の妹を満島ひかりが演じていた。
犯罪者の妹として日陰で生きる満島ひかりや、妹が殺されたのは自分のせいだと自らを責めながら生きる瑛太を見て、犯罪者の家族や被害者の家族の苦悩や生活を知ったオニー。
何より、オニーは線の細い華奢な満島ひかりがタイプだった事もあり、このドラマにハマった。「こんな事になるんや・・・。」衝撃の最終回だった事もあって、オニーの脳裏に焼き付いたようだった。
そして先日、2人で話している時に、テレビのCMで満島ひかりを見たオニーが「満島ひかり見るとな、イモートを満島ひかりにしたらあかんって思うねん。」と言ったのだ。
それだけの会話。直ぐに他の話になったのだが、オカンは心が震える程嬉しかった。伝わっていた・・・!
あの頃は、何を教えても伝わってるのかいないのか、聞いているのかいないのか、オカンには分からず、伝われ!!と祈る事しか出来なかった。当時はまだ知らなかったが、オニーは発達障害の検査の結果でも、聴覚から伝えるよりも視覚からの方が理解し易いと言われた。
1度に2つ以上言っても理解出来なくてフリーズするので1つずつ言うこと。でも視覚からなら理解度は早くて高い、と。偶然にもビデオはオニーに適していたのだ。
イモートを犯罪者の妹にしない。
オニーには反社会的思考が強いので、ずっと心配していたが、この気持ちがストッパーになって欲しい。そう思って伝えてきたことが伝わっていたと思えた瞬間だった。
長い育児、直ぐに結果は出ない。でもこうやって、ふとした瞬間に、ちょっとした事で報われた気持ちになる。でもだからといって100%安心も出来ない・・・。親って大変だなぁ。